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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

ZMI「ふうね」

 

ふうね

ふうね

 

 

日本の女性ピアノ演奏家による1st。

ザッツ・ァ・グッド・ジャパニーズ・ポストクラシカル、そのなかでもおおかみこどもの高木正勝以降を明確に意識させられる新世代。Akira KosemuraやHaruka Nakamuraらに比べると、より一層日本の童謡や映画音楽の影響下を感じさせる「和」の旋律が漂うのが特徴だ。その演奏は表情豊かで息遣いを感じる。

「四季の流れをアルバムとして表現したかった」という言葉の通り、ひとつひとつのトラックにそれぞれ別の味わいがあり、それでいてアルバムを通して聴いたときにひとつの作品集としてしっかりとした時間の重みがある。季節の流れにしても、1曲1曲がここからは春、ここからは夏、秋、冬と単純に色づけされているわけではなく、春の芽吹きからはじまり、やがて雨の時期を経て、夏の日差しが差し込み、それから葉が落ちて秋が来る、といったようにリニアな展開を意識している。

さらに、ピアノが踊る流麗な前半中盤から冬に差し掛かる終盤ではフィールドレコーディングを取り入れたエレクトロ調の靄がかかってくる。こうしたアクセントは作品の印象を散漫にしかねないところだが、しかし本作は上手くバランスをとり、まとまったところに踏みとどまっている。

印象に残ったのは高木正勝の代表曲「きときと」の流れを汲む軽やかなリズムで心がハねる「雨の踊り子」。そして「雨の踊り子」から雪崩れ込むのは本作でもっともメロディアスでドラマティックな「夏音」で、これは耳に残る流れだ。奥行きのある音響が身体に沁みる終曲「Moment」からは一年の重みを感じさせる。

日本のポストクラシカルも役者がおおよそ出揃い、新たなブレイクスルーと工夫が必要な時期が来たというのが正直な肌感覚だが、そのなかでこの作品は新世代の芽吹きを感じながらも、目的がはっきりとしていて、とっつきやすく、土や雨を彩り豊かに運ぶ好盤だといえる。好きモノを自覚する人はぜひ。

 


夏音 -natsu oto- by zmi - Hear the world’s sounds