lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

東京カランコロン「UTUTU」

 

UTUTU (CD+DVD)

UTUTU (CD+DVD)

 

 

男女混合5人組バンドの3rd。

同世代の実力派に比べれば音楽的語彙に豊富なわけではない。息を呑むような演奏があるわけではない。ボーカルの歌い方もどこかで聴いたことがある。曲だって、王道といえば聴こえの良い使い古しのギターポップである。ここ最近のバンドらしく、言語感覚にちょっとした捻りは加わっているから、まあ少しばかり個性的には見えるかもしれない。そんな「特別優れたわけでもない」バンドという印象。しかし、このアルバムにはそんな生意気な聴き手の心を動かすまっとうさがある。大いなる成長がある。愛らしい真摯さがある。

ヘッドフォンの向こう側の「うたうたい」に恋する乙女をユーモラスに歌った「恋のマシンガン」。サイズの合わないヒールの踵の痛みをモチーフに、失恋の切なさを丁寧に描いた「ヒールに願いを」といったリードソングは魅力的だ。また、ハードロック調の「ビバ・ラ・ジャパニーズ」はどこか微笑ましく、80年代風エレクトロポップの「ネオンサインは独りきり」の煌びやかにメロウな調べも良い。こんな作風のアルバムも聴いてみたいと思えるほどよく出来ている。

そして、この作品を魅力的なものにしているのは「想像力」というテーマだ。

「Bメロ終わったらサビがくるから / 単調な日々を弾むポップスに変えて / 不安ぬぐったら動き出すから / この物語のヒーローにならなくちゃ」

音楽は飛び跳ねることができるものなのだ。そう、音楽はBメロからサビに飛び跳ねることができる。灰色の日々をハネて、彩ることが出来る。だから、私たちはやめられない。「夢かウツツか」というオープニングにはそんなマニフェスト、あるいは決意が込められているように聴こえる。

東京カランコロンがこの作品で歌った登場人物の多くは叶わない恋に思いを馳せたり、喪った恋の苦味を抱えている。どうにもうだつもあがらない、カッコのつかない人物ばかりだ。しかし、いまは痛みを抱えているけれど、「飛び跳ねることのできる」ポップスならいつか飛び越えることができるかもしれない。「夢かウツツか」という素晴らしい楽曲に導かれ、彼らはそんな「飛び跳ねるためのポップス」を描くバンドとして繭を破り、大きな羽を広げようとしている。

さて、彼らは今作に収録されているシングルのカップリングで、レディオヘッドの「フェイク・プラスティック・トゥリー」をカバーしている。それを知ったとき、どこか唐突だなと感じた。相対性理論フォロワーとまでは思わなかったが、レディオヘッドの世界観からはほど遠い、良くも悪くもずる賢い、うまいことやってる陽性なバンドだと距離を置いていた。しかし、このアルバムを聴いて納得がいった。東京カランコロンは自分が想像していたより、ずっと不器用なことをやるバンドだったのだ。

結局のところ、それでも彼女たちはありがちな女性ボーカルバンドとしてありがちに消費され、ありがちにないがしろにされるかもしれない。しかし、彼らは今作で自分たちの音楽=ポップスの役目に向き合うことができた。そして、こうした真摯な「想像力」が必要な人というのは、きっと、いつだって少なからずいる。2015年のはじまりを飾るにふさわしい、清清しい好盤だ。

 


東京カランコロン / 恋のマシンガン【Music Video & Short Filmダイジェスト映像 ...