読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

the fin.「Glowing Red On The Shore」

 

Glowing Red On The Shore EP

Glowing Red On The Shore EP

 

 

神戸のインディロックバンドのデビューEP。

ギターロックにチルウェイヴ/グローファイのアンビエントな響きやシューゲイザーを取り入れたメランコリックなサウンドが特徴的。最先端というわけではないが、ここ数年の世界的な流行をうまく取り入れている。英語詞ということもあり、いわゆる「ヨーガク」的と評されてきた音楽性というべきか。

the fin.に限らず、セカンドロイヤル周辺を中心とした関西のインディロック文化はこれまで以上に自覚的に00年代以降のUSインディの流行を取り入れている。Homecommingsなんかはシンプルなギターロックだし、Teen Runningsはギターポップの「ベタ」をシニカルに解釈しているちょっとマニアな音楽性だし、Happyはなんというか、イケメンだ。現在は東京在住だが、セカンドロイヤルから作品を出しているNew houseの新しいアルバムはフリーフォークの影響下にあるサイケデリックな作風で、いずれにせよ彼らには「日本だからこそ」「日本ならではの」という枕詞は感じさせない。ノリの良い爽やかなガールズポップに換骨奪胎したHomecommingsによるマグネティックフィールズのカバーもそうだけれど、そこには"私たちより進んでいる"「カイガイ」や「ヨーガク」への畏れという認識は感じられない「川は高いところから低いところに流れていく」、ではなく「夕方の凪いだビーチで海水浴」というフラットな感覚がそこにはある。「やがてやってくる」といわれていた時代にごく自然と、いつの間にかなっていた。

HomecommngsやNew houseに比べて彼らの音楽性が好きなのは、単に「ギターロックのサウンドにチルウェイヴ/グローファイのアンビエントな響きやシューゲイザーを取り入れたメランコリックなサウンド」が好みだからだ。そして、自分がメランコリックなサウンドを好きなのも日本人だからではないし、彼らがこうした音楽を鳴らすのも日本人だからという理由ではないだろう。the fin.のメンバーがインタビューで答えていたのだが、「瓶に手紙をつめて海に放流するとき日本語で手紙は書かない」という発言に思想が込められていると思う。まぁ、言われてみれば確かにそうだ。youtubesoundcloudで自分の音を配信するなら日本語詞より英語詞のほうがいいのかもしれない。音楽に対して、創作に対して、荒れ狂う波のような抑えきれない感情の渦を期待する人にはこうしたスマートな態度はちょっとつまらないかもしれないが、世界中の多くの人にとって、どの時間に朝を迎える人にとっても、これは穏やかで心地よい、夕方の凪いだ海のようなポピュラーミュージックに聴こえるだろう。

 


Faded Light / The fin. - YouTube