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音楽とコミックのレビューブログ

くるり「THE PIER」

 

THE PIER (通常盤)

THE PIER (通常盤)

 

 

11枚目のオリジナルアルバム。

新体制後初にして節目の10枚目の前作 がバンドのこれまでの歩みの統括と新しいフェーズを同時に提示した力作なら、今作は一気にアクセルを踏み込んだ快作。

これまでの試行錯誤と実践のなかで得た多様な音楽性を「ハードロック+演歌」、「中東民族音楽+クラシック」、「ケルト+EDM」とまるでレゴブロックや編み物のように自由自在に組み合わせる。「日本海」「ロックンロールハネムーン」「Liberty & Gravity」あたりのメソッドもテンプレートもかなぐり捨てた序盤のテンションの高さには思わず身を乗り出すほど。そして、全世界全天候向けクリスマスサウンド(それ故に「雪」という歌詞を使ってしまったのは勿体無い気もするが…)「最後のメリークリスマス」はアルバムの集大成ともいえる秀逸なポップスで耳に染みる。

他のバンドを圧倒する音楽的語彙力と豊富な経験をもって練り上げられたこの世界のどこにもない自由な多国籍音楽。そして、それらを無理なく繋げているのはファンファンのトランペットの息遣い。このトランペットという楽器は、世界中のどんな音楽にも居場所を生み出す魔法の楽器で、それを伸びやかに操るファンファンが新体制のくるりにとって欠かせないものとなったのは大きな収穫だろう。

この異形のテンションが中盤の「loveless」「remember me」あたりで一度落ちてしまうのがもったいない。くるりの王道中の王道ともいえるバラードで、間に短い楽曲を挟むことでスムーズに入れるようになってはいるのだが、強烈だった序盤の印象がそこでいったんリセットされてしまうのは否めない。その一方で、とっちらかったまま終わりかねないこのアルバムを最後にきっちりと締めてくれるロックバラード「There is」が作品の完成度を高めているのも事実。だからこそ序盤のテンションのまま「最後のメリークリスマス」まで突き進んでくれれば……。

 


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