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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

NRQ「ワズヒア」

 

ワズ ヒア

ワズ ヒア

 

 

二胡の響きが印象的な日本のインストバンドの3rd。

これは砂の香りか、葉の香りか。クラリネット二胡とギターが絡み合う、自由で伸びやかな響き。メンバーのそれぞれが名うての演奏家であり(特にDrの中尾は20年以上のキャリアを持つ大ベテラン。そして本職は管楽器…)、どことなくSAKEROCKグッドラックヘイワを連想させる穏やかな曲調には、一方で作品のテンションと熱量を魅力的な状態で保つ大人の色気と最高のバランスを模索する緊張感に溢れている。印象的にリバーブがかかったそのサウンドは、東欧の小国の異国情緒のような、乾いた風が吹くアジアの山村ののどかな山道のような、あるいは日本の地方都市の駅前の喧騒のような、耳を澄ませるたびに見える景色が変わる懐の深さがある。

グッと心をつかむのは二胡バンドネオンを鳴らしたかのような切ない響きが印象的な2曲目の「slope」。リードトラックながらバンド結成当初からのレパートリーである「sui」もキュート。本作中では異色のダビーな佳作「門番」もこの作品がインスタントなイージーリスニングではないことを証明しており、上手く溶け込んでいる。全体を通して必要以上に一線を越えない音作りだけれども、ときおりドラムがロックに「ハねる」のがお茶目で、この作品をさらに印象的なものにしている。「東16字星」におけるリズム隊のミニマルな間奏は特に耳を惹く。

ニューオリンズジャズ、ボサノバ、タンゴ、中国宮廷音楽、ポストロック、またはポストクラシカル……どの文脈もこの作品を形容するのには近くて遠い。グイグイと踏み込んでくるわけではない。しかし遠くから見つめるわけでもない。けれども、そのサウンドは熟練の渋味と人懐っこさを同時に感じさせる絶妙な距離感に仕上がっている。結局、これが砂の香りなのか、葉の香りなのかはわからないが、世界中のあらゆる日常に沁みわたる、愛おしい一品。

 


NRQ「sui」 - YouTube