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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

福島聡「星屑ニーナ」

 

星屑ニーナ 1巻 (ビームコミックス)

星屑ニーナ 1巻 (ビームコミックス)

 

 

 

星屑ニーナ 4巻 (ビームコミックス)
 

 

00年代からビーム誌を中心に活躍していた福島聡によるSF漫画。2014年完結。

舞台は近未来。「役たたず!」とゴミ捨て場に廃棄された少年型小間使いロボット、星屑。物語は女子高生のニーナに星屑が拾われるところから始まる。

電池切れでこれまでメモリーが全消去された星屑は、それでも小間使いロボットの本能か、ニーナに仕えることを望む。とはいえ、ニーナはお手伝いロボットなどなくても生きていける気丈な女性。親を見つけた雛のように後ろについてくる星屑に対して、「ご主人になってほしかったら、星をひとつとってきなさい」と無理難題を押し付け、さらにこう告げる。「まあ、ご主人様にはなれないけれど、あなたを成長させる先生にはなってあげる」…。

ここまでがプロローグだ。しかし、時間軸どおりに物語が進むのはここまで。ここから物語は未来を飛び石で駆け抜けていく。

次の話ではニーナはすでに結婚相手を見つけて、その相手に嫌気がさして家出する。さらにその次の話ではニーナはごく潰しの夫、タイへーのために働きに出る。さらに、その次の話ではニーナは宝くじの一等を当てて、タイへーと星屑とともに孤島で自由気ままな生活を送る。そしてその次の回では、ニーナとタイへーが天寿を全うし、再び孤独になった星屑が、ふと島へとやってきた少年ルイと出会う。

ルイは星屑のメモリーのなかのニーナに恋をして、もはや決して出会えることのない彼女への想いをひきずりつつも、本物の愛を探すために宇宙探索員となる。美しく精悍な青年へと育った彼は、やがてポポというはつらつとした少女と出会い、愛を知り、やがて子をなす。

そして、その娘、ピッピは……そう、この物語は星屑という(電池さえあれば)永遠の命を持つロボットが、さまざまな人間と出会い、彼らが愛する人とつがいとなり、子を持ち、やがて退場し、次の主人公に物語が託されるという、ヒトからヒトへと紡がれていく「冒険の記憶」をメモリーに刻んでいく物語である。

「冒険の記憶」という因縁の輪。しかし、ニーナ、ルイ、ピッピに次ぐ4人目の主人公たる少年は、その輪においてあまりにも無関係で、とるに足らない存在である。モブと言い換えていい。しかし、彼は星屑にこの「冒険の記憶」が「誰かを想うこと」で結び付けられた「愛」の記憶なのだと気付かせることとなる重要な役目をもつ。

さて、この物語には「神様」なる人物がたびたび登場する。序盤から登場し、時間軸をこえてたびたび現れるデウスエクスマキナたる彼は、その全能たる力を使って物語を導こうとするのだけれども、なかなか上手くいかない。7日間で世界をつくり、人間を生み出した神様でも、ヒトの想いはままならないものなのだ。そんな「神様」がうしろめたさから、星屑に対してある贈り物をすることで、物語はとても静謐で美しいラストシーンを迎えることとなる。

誰かを想うこと、慈しむこと、愛おしさから思わず手を差し伸べること……それらの感情がこのユーモラスでパワフルなSF活劇の根底をなし、豊かなものにしている。全4巻。一度読み始めたらすんなりと読みきれる量である。しかしこの作品には何十冊もかさばる大作に負けないくらいの密度とメッセージが込められている。