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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

Emerald 「Nostalgical Parade」

 

Nostalgical Parade

Nostalgical Parade

 

 

PaperBagLunchboxのフロントマン、ナカノヨウスケが新たに結成したバンドの記念すべき1st。バックバンドの出身であるジャズを基調に、シューゲイザーやダブの要素を加えたディープなサウンドに、たとえばPolaris直系ともいえるナカノの繊細な歌声が絡み合うムードな作風、というのが目指すところなのだろうか。

 

『音楽を、やめた人と続けた人』 - 連載・コラム : CINRA.NET

 

とはいえ、幸か不幸かこのバンドに関してはどうしてもPaperBagLunchboxの崩壊を追ったこの連載の翳が付きまとう。ひとつのバンドの終わりと、あるバンドの誕生を追ったこの連載そのものは、ニュースサイトの特集記事、あるいはバンドの特集記事の枠を超えたエモーショナルな筆力に満ち溢れており、読み応えがある。個人的にもこの記事をきっかけにまんまと興味を惹かれたがゆえに、音源を聴く前からそれなりの思い入れを持ってしまった。まー、これはレビューする上でなかなか難しい。

さて、本作。先ほどの記事のなかでの出来事(金銭や人間関係での苦難)が反映され、それが作品の軸になるほどめり込んでいるのはPBLの最後のアルバム「Ground Disco」(こちらはゼロ年代日本語ロックの集大成的傑作!)まで。Emeraldでも憂いのある歌声とマイナー調の歌詞は特徴的ではあるが、あくまでそれは要素であり、そうしたナカノの個性と、ジャズ界隈出身だけありディープで懐の深い演奏を鳴らすバックバンドとの兼ね合いによる心地よい音楽体験こそがこのバンドの肝だと感じさせられる。

しかしながら、いくら要素だとわかっていても歌詞がこそばゆい。あまり曲名にケチをつけるのもなんだと思うのだが、「フラニーの像意」なんて連呼されてしまうと、うーん、ちょっとと身構えてしまう。歌詞はあくまで言葉だから、と割り切っても数曲ごとに挟まれるポエトリーリーディング調の楽曲からはどうしても「イタさ」が抜けず、バックバンドのトリッピーな演奏と噛みあわせが悪く、悪目立ちしてしまっている。ありがちなことではあるのだけれど…。

一方で、具体性を避ける歌詞でうまく聴き手に想像をゆだねつつ、3分48秒のなかに青春の諦感とそれを諦めきれない気持ちの中で揺れる情緒をつめたリードトラック「Summer Youth」はよく練られており、強い魅力を感じる。次回作はこのようなコンパクトで上質なポップス集という方向で作品を熟成させてくれれば好みかな。

 


Emerald / Summer Youth 【OFFICIAL MUSIC VIDEO ...