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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

2014 Best Album 10

おなじアホなら踊らにゃ損!中指立てるのは投票してから!

というわけで年間ベストです。3位以降の短評も追ってつけます。

 

1.シャムキャッツ「AFTER HOURS」

 

AFTER HOURS

AFTER HOURS

 

パーティなんて最悪だ。孤独で惨めな気持ちになるだけじゃないか。新しい暮らしに馴染めるか不安だし、仕事に行くのも憂鬱で、パートナーと呼べるのはペットの猫くらい。そんな物寂しくも甘い郊外の退屈。しかし、あるときを境にそんな平凡な生活すら、愛すべき懐かしい過去へと変わってしまった。夏目知幸はその無常をテーマに設定し、見事に描ききってみせた。スマートで、軽やかで、だけど涙目。今を生きる、2014年のロックンロール。

 

2.森は生きている「グッド・ナイト」

 

グッド・ナイト

グッド・ナイト

 

 前作の幽幻でフォーキーな匂いを残したまま、より前のめりに、スケールの大きくなったサウンド。安物のヘッドフォンでも分かる異常なまでの音のよさ。合計17分、渾身の大作「煙夜の夢」を中心とした大胆な構成。解釈に頭を悩ませる哲学的な歌詞もキレにキレている。その全てがマニアックで完成されていながら、スリリングで、妖しく、気持ちよい。なんだ、素晴らしいポピュラーミュージックじゃないか。良くも悪くもこじんまりとした1stから飛躍し、ロックバンドとして頼もしい成長を遂げた会心の2ndアルバム。

 

3.ROTH BART BARON「ロットバルトバロンの氷河期」

 

ロットバルトバロンの氷河期 (ROTH BART BARON'S “The Ice Age

ロットバルトバロンの氷河期 (ROTH BART BARON'S “The Ice Age")

 

 「僕らに託された望みは全てかなえてはやるもんか / こんな場所で生きてたくないし / こんな場所で死にたくはない」「僕ら / みんなが欲しがる / 救いなんかいらないんだよ」。USインディを引き合いに出されるフォークでフリーキーなサウンドに乗るのは、まるで子どもがダダをこねるような、しかし胸をつく言葉たち。東京生まれ東京育ちの若者2人が作り上げた、世界のどこにも属さない渾身のプロテストミュージック。

 

4 OGRE YOU ASSHOLL「ペーパークラフト

 

「みんなが未来や夢を語り合った / 問題は誰を見捨てるか」。1曲1曲が作りこまれ、練り上げられたサウンドは自転車に乗りながら口ずさめるようなキャッチーなメロディとは程遠い。鏡に映る鏡のような、マトリョーシカのようなループサウンドは、まさに「他人の夢」のなかにいるような居心地の悪さを覚える。私たちにかかる靄はきっと晴れないし、それなのに常に何かを忘れ続けていく。低温の悲観、平行線の怒り。吐き気を覚えるほど、OYAの最高傑作。

 

5.ミツメ「ささやき」

 

ささやき

ささやき

 

このジャケットの衝撃たるや。合成写真などではなく、この国のどこにでもあるような集合団地を写した一枚なのにこんなにも不安になる。かつてどこにもない、かけがえのない夜の風景を描こうとした切なくも優しいユートピア性はここでは消え、その代わりに彼らはどう切り取っても代わり映えしない画一化された風景のなかで生きることと向き合いはじめている。夜は停滞した。しかし、ミツメのサウンドはこれまでにくらべてはるかに鋭く、逞しくなった。

 

6.本日休演「本日休演」

 

本日休演

本日休演

 

 

 

7.吉田ヨウヘイGroup「Smart Citizen

 

Smart Citizen

Smart Citizen

 

 

8.蓮沼執太フィル「時が奏でる」

 

時が奏でる

時が奏でる

 

 

9.The Novembers「Rhapsody in beauty」

 

Rhapsody in beauty

Rhapsody in beauty

 

 

10.ハンバートハンバート「むかしぼくはみじめだった」

 

むかしぼくはみじめだった

むかしぼくはみじめだった

 

 

■ 統括

ミュージシャンのみならず、その周辺を取り巻く多くの人たちの努力と試行錯誤が実となって現れた大豊作の一年だったと思う。

ロットバルトバロンや王舟、失敗しない生き方らデビューアルバムが待たれていた若い才能は見事にその期待に応え、それに負けじとシャムキャッツやミツメ、森は生きているなどの先輩たちも飛躍の作品を仕上げた。

若手だけではない。それぞれキャリア最高作を作り上げたハンバートやノベンバーズ、銀杏ボーイズをはじめ、真部脩一の加入が最上の化学反応を生んだVampilliaなど、中堅・ベテランにも収穫が多かった。その中でも、前作からさらに深化し、強靭で濃厚なサイケサウンドを作り上げたオウガ・ユー・アスホールには随分と遠いところまできたものだと舌を巻いた。アルバムはそれほどだったが、「サイケデリアレディ」という素晴らしいロックナンバーを作り上げた踊ってばかりの国もぜひ名前を挙げておきたい。

新しい方向性がサマになっているきのこ帝国には好感を覚えたし、初音ミク界隈出身の古川本舗が一歩踏み込んだ傑作を作り上げたのも感慨深い。嬉しいのは、個人的に評価していなかったアーティストに自らの見る目のなさを思い知らされたことだ。特にミツメに関してはライブを見た上でまったく評価していなかったのだが、作品の力で見事にねじ伏せられた。こういう嬉しい敗北は何度でもしたいものだ。

一方で、ここ2年くらいでさまざまな場所、さまざまなジャンルから傑作が浮かび上がってくる状況に明らかに言論が追いついていないように思える。例えば、ライブハウスをはじめとした現場から試行錯誤の末に生まれつつある新しい世代のインディロックの流れに対して、それだとリスナーがわからないからキャッチーなもの(4つ打ちダンスロックがフェスの潮流!)を作ったほうがいいというのはあまりにも虚しい。ここ数年で起こっている流れはただのムーブメントではなく、音楽を作る環境を育むための土から入れ替えるような壮大な試みと捉えているが、こういうところにも土の入れ替えが必要なのだろうと情けないため息がでる。