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音楽とコミックのレビューブログ

食品まつり「cloudwork」

 

COULDWORK [初回盤限定ボーナストラック(DLコード)付き]

COULDWORK [初回盤限定ボーナストラック(DLコード)付き]

 

 

国内ジューク/フットワークの中心人物による新作ミニアルバム。

「高速と低速を行き来する、三連譜を多用したトリッキーなリズム」というのがジュークの基本。しかし、単にジュークのマナーに則っただけのアルバムというよりは、チルウェイヴやヴェイパーウェイヴといった2010年代以降のエレクトロサウンドを取り入れた作品と捉えるほうが妥当であろう。その一方で、本作は単に新しいものを追いかけるだけの作品ではない。蠅の羽音のような(本来であれば耳障りな)サウンドで構成された「mosquito&clap」、「kougeki robo」や「kiki」のようなメカニックな実験音楽、あるいは古典的電子音楽の再展開ともいえるような挑発的な楽曲が作品中に散りばめられており、その一方で「Hitou He Go」「Awa Buro」といったメロディアスで穏やかな楽曲も存在する。その態度は、あらゆるものがインターネット上に散らばることでレアグルーヴの魔力や音楽的教養の意味合いが失われ、その代わりにあらゆる場所に自己がアクセスできるようになった現世代のエレクトロミュージックにおいては模範解答的だとだといえるだろう。

しかし、これらは豊かに折衝し混ざり合うというよりは、あたかも、一つのアルバムのなかで中原昌也砂原良徳共存しているかのように、あるいはジキルとハイドのように、実にスキゾフレニックな印象を与える。一定の完成度を保ちながらも、心の不安定な部分を的確に突いて心をざわつかせてくるのだ。そこには私たちが名前をつけ、訳知り顔で、我がもののように語る音楽たちが傷物となり生々しく曝されているような不安がある。その不安はアルバム終盤になると、もはや取り返しのつかないノイズの塊にまで変貌し、膨れ上がって炸裂し、最後には美しいアンビエントで召されていく。南無。

現世代におけるトップランナーたるアルカのパートナーであるジェシー・カンダが生み出す強烈な映像のように、作品が現代の編集技術と映し鏡であろうとすると、そこには肉体と精神を歪ませる悪夢的な意匠が生まれる。あるいは、のび太くんが3D化すると(いまだに!)不気味で、とてもじゃないがドラ泣きする気分にならないように、10年代の技術をしても、現実の不安は拡張はされども乗り越えることはできない。それを乗り越え、一歩先へと進ませる「嘘」もまた電子音楽の役目かもしれないが、この場で語るべきではないだろう。模範解答な作品でありながらも、ぬぐい去れない不安が最後にはノイズになって降り掛かるこのアルバムもまた同じように、現代の技術の悪夢的意匠を意識させる作品だ。そして、それは以前のような予言めいた悪意ではなく、私たちにとってはシリアスなものになりつつある。

 

 

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