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音楽とコミックのレビューブログ

ザ・なつやすみバンド「パラード」

 

パラード

パラード

 

 

男女混合4人組グループによる2nd。メジャー進出作。

ピアノ、ベース、ドラム、そしてスティールパンという個性的な構成。ボーカルの中川の朴訥な歌声にそのスティールパンの響きが絡み合う、独特で素朴で愛らしい情景。そして、ピアノの音が爽やかに通り抜ける柔らかなメロディ。ダンスミュージックに接近した「ユリイカ」や「S.S.W」など、表現の幅を広げる冒険心を感じさせながらも、もはや信頼と安心を覚えるほど強固に仕上がった「ザ・なつやすみバンド・ブランド」なサウンドはきっちり継続されている。CD音源デビューして、まだ指折りで数えられる程度の作品数であることを考えると、これは見事なことである。

しかし、前作と今作を分かつのは歌詞である。今作最大の驚きは、バンド名にも採用され、サウンドの個性以上に彼らを特徴付けていたはずの「夏休み」という意匠が今作ではごくわずかな要素程度に後退していることだ。「夏休み」という一年のうちのごくわずかな期間。燃えるような日差しを浴びながら、一瞬の儚さを噛み締め、電車から見える海や田舎のキウイ畑、そこに立つ少女の姿を心に焼き付けようとする。その世界観が魅力的だったのは、彼らのいう夏休みなるものにノスタルジーを感じたからではない。惹かれたのは、こうした刹那的なモチーフに心を揺り動かされて、「これが世界だ」と錯覚してしまうような無邪気さと危うさだ。そして、その小規模な「世界」は「夏休み」であるがゆえにやがて喪われることを約束されている。さらに、その切なさは、私たちが生きているもっと広大でやりきれない世界=「夏休みではない」時間をも逆説的に浮かび上がらせる。そう、そこには「夏休みではない」時間を生きるために置いていった幼さと、喪われた子どもたちの叫びがあった。なつやすみバンドはその痛みを白日の下に曝してみせたのだ。だからこそ、前作はごく理想的に牧歌的なポップスでありながら、それに似合わぬ強烈な感傷があったのだ。

 

「たまには世界を無視して / ゆっくり眠りこけよう」

 

今作はそんな痛々しい前作に比べて、ウェルメイドに出来ている。彼女たちもまた、夏休みという「祭り」のトンネルを抜けて、広い場所に立ち、音楽を鳴らすという開放感に身を任せ、さらには宇宙を目指そうとしているのだ。ひとつ印象に残るのはこの「宇宙」というモチーフだ。船の帆を広げ、翼を広げ、空に飛び立っていく。それを成長や成熟だと言い換えることが出来るだろう。しかし、前作で彼らが拾い上げたのは、そうなることで置いていってしまう幼い記憶ではなかったか?後悔や傷跡ではなかったか?世界が忘れようとするちっぽけなことを、輝かせることではなかったのか?

このアルバムは失敗作ではない。メジャーレーベルのスケールのなかで、より強い結束を意識させる彼らの音楽的挑戦とその一定の成功は見落としてはならない。「夏休み」という分かりやすいギミックを外したことで、アルバム全体のテーマは以前より曖昧になっているが、そのことが作品の質を下げているというわけではない。ただ、前作と今作では聴き過ごせない隔たりがあり、自分にはその隔たりが幸福なものだとは思えないのだ。

 


ザ・なつやすみバンド - 「パラード」 Music Video - YouTube