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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

空気公団「こんにちは、はじまり」

 

こんにちは、はじまり。

こんにちは、はじまり。

 

 

8枚目のニューアルバム。

個人的な話にはなるけれども、彼らの音楽を聴くのは随分久しぶりで、それこそシングルの「青い花」となる。穏かでマイナー調の前半、ポップな後半と色づけはされているが、いずれにせよ、当時の印象に比べれば、心地よく優しく、線の細かった山崎ゆかりのピアノは随分と情感的で生々しくなったし、これまでの作品で意識しなかったギターサウンドが随分と前に出ている。ボーカル、ピアノ、ドラムス、ベースという彼らを構成する要素だけではなくフィールドレコーディングの雨の音、そして参加したゲストの演奏に至るまで、ひとつひとつのサウンドが剥き出しになっており、リードトラックの「はじまり」、本作のハイライトともいえる「新しい窓」にいたってはもはやロックンロールのダイナミズムまで感じさせる。更なる驚きは山崎ゆかりの出身地である青森の民族音楽を彼らなりにアレンジしたラストトラックの「お山参詣登山囃子」だ。彼らのうたい文句だった「日常」や「生活」とは別の世界にあるはずの「まつり歌」に対して、和太鼓の響きや山本精一のサイケデリアを見事に取り込み、おおらかかつ伸びやかに表現している。

広告やインタビューをみていると、「日常」や「生活感」といった言葉は相変わらず見られる。しかし、このアルバムのサウンドからは以前の自分が聴いていた彼らの世界観よりも広がりを感じる。紆余曲折がありながらも、中堅からベテランともいえる年代に移行し、世代感覚やカテゴリーを意識せずに音楽を作れるようになったのだろうか。都市生活的でありながら、オーガニックでスローライフであるという矛盾を孕んだ空気公団「らしさ」から少し距離を置き、彼らの身体に染み込んでいる本来のバックボーンが感じられる作風になっている。

発売時期が過ぎて、次のアルバムが発表されれば、ひとつひとつの作品はそれほど精査されることなく公式サイトのディスクグラフィ上の過去になっていく。私たちはなにせ、常にあるひとつの音楽を聴いているわけでもないのだ。空気公団のように15年近くの活動で10枚近くもアルバムも出せばいかんともしがたくその流れに飲み込まれるだろう。音楽を巡る時間はあまりにも残酷、といえば聞こえがいいが、単に無頓着で無神経なだけで、しかし、そうだとしたらもうちょっと付き合い方や語り方があるように思っている。まあ、その一方でふとした思い付きで思いもがけない再会をして、その変化に面白みや親しみを感じるということもある。これ以上はまとまりのない余談と愚痴になるけれど、それはそれで音楽の楽しみのひとつでもあるのだろう。

 


空気公団 "お山参詣登山囃子" (Official Music Video) - YouTube