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lost&safe Blog

音楽とコミックのレビューブログ

Polaris「Music」

 

MUSIC

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9年ぶりのニューアルバム。

「季節」を思い起こすAメロ。まるで「檸檬」のようなBメロ。胸を切り裂く切ないメロディと、ダブの海に沈んでいくような浮遊感。あまりにもキャッチーで、あまりにも記憶の中の彼らとしか言いようがない一曲目の「点と天」。しかし、そんなノスタルジーな気配を漂わせたオープナーを切り裂くように、2012年の再結成からアルバムの完成までこぎつけた彼らの揚々たる船出を思わせる新たな代表曲「大気圏」に雪崩れ込んでいく。一曲目からの緩急(それは単にゆったりとした曲から速い曲になった、というだけの話ではない)に最初は面を食らうが、その疾走感にやがて身体が踊り、心もノる。そうしているうちにほどなく、以前より更に魅力的になったポラリスが帰ってきたのだと気づくはずだ。

大きな変化といえば、サウンドの方向性に幅ができたことだろう。印象的なのはエレクトロニカAORの通過を意識させられるところで、こうした特色はアルバム前半に顕著だ。「大気圏」から続く「One」「Pray」の並びはまるで後期ポリスのバラードのような質感で、新生ポラリスの風通しの良さを感じさせる。アルバムの流れから若干浮いているように思えるのは否めないが、「Neu」などはかつての彼らにはみられなかったエレクトロサウンドである。大谷のソロ活動がしっかりとポラリスにも還元されているということだろう。いまや彼らにとっての重要人物となったミトをはじめとした豪華なゲストたちの存在も、閉じがちだったポラリスの世界観を広げている。

もちろん従来の彼らの武器だったダビーなサウンドも錆びるどころかライブを重ねることで研ぎ澄まされている。メドレーが続く中盤はいかにもポラリスらしい構成だし、復帰作である「光る音」の瑞々しさはどれだけ聴いても色褪せない。幅の広い表現をモノにして、成長と充実を見せつけつつも、この曲をラストに持ってきた意味合いは大きい。彼らが軸とするサウンドがデビューから15年近く経った今でも心を動かす力があることを証明している。

かつて「恐るべきニューカマー」(彼らはすでに十分に大人であったのだが)だったポラリスは、アルバムを重ねるごとに「出会った頃のポラリスのままでいてほしかった」リスナーとの間に距離が開いていった。そうなるうちに、彼らのニューアルバムを手にすることができるまでに10年近い歳月がかかってしまった。まるで一つの宇宙を越えてくるような、かくも切ない相対性理論の網を抜けてくるような、途方もない時間だ。それでも、彼らからの手紙は届いた。それは記憶のなかに眠る「美しい」ポラリスで、一方で遠くを目指して舵をとる「新しい」ポラリスだ。そしてなによりも、現在のポラリスは大谷の息遣いひとつとっても、都合が良いだけの私たちの記憶のなかの彼らよりもはるかに生々しく「素晴らしい」ポラリスなのである。かつての「太平洋」から「大気圏」を越えて、そう、燃え尽きるまで!

 


Polaris / 大気圏 (Taikiken) M.V. - YouTube

15年前、電車の窓の向こう側はどこまでも遠かった。今は、たとえ空の向こう側でも掴まえにいける。彼らの初期の代表作である「季節」のPVとこのPVを見比べると、それだけで感慨を覚える。追記にして余談にはなるが、いやはや素晴らしいPVだ。